研究課題
本研究では、精度の高い新たな部分空間同定法を提案し、さらに、正準相関解析に基づく確率システムの平衡実現に関する研究とH無限大同定の理論を融合して、雑音モデルに周波数制約を与えることができる新しい確率実現の理論を提案することである。本年度の研究成果は以下の通りである。1.測定雑音が異常値を含む状態空間モデルの同定法として、統計学分野で知られている調整最小2乗法(Least-Trimmed-Squares)を導入して、システムのパラメータを同定するアルゴリズムを提案し、システム制御情報学会論文誌(2006.4)で発表した。2.古典的な確率実現問題をヒルベルト空間における確率実現問題として定式化して、LQ分解による新しい実現理論を考案した。この結果に基づいて、確率部分空間同定アルゴリズムに対する新しい方法を提案して、Automatica(2006.5)で発表した。3.部分空間法において重要な役割を果たすLQ分解におけるL行列の列ベクトルは入出力データの一次結合によって生成されたものであるという、LQ分解のシステム論的な意味を発見し、国際会議:回路とシステムの数学理論(2006年7月)において発表した。これによって、既存の部分空間同定アルゴリズムの理解が非常に深まり、また新しいアルゴリズムの発見にも役立つものと予想している。4.周波数データに基づく変数誤差(Errors-in-Variables)モデルの部分空間同定問題について考察し、部分空間法とJスペクトル分解に基づく同定アルゴリズムを提案し、IEEE決定と制御の国際会議CDC2006(2006.12)で発表した。5.2004年に発表した「システム同定」(朝倉書店)に基づいて、DVDによる「部分空間同定入門」を学会からライブラリーとして刊行した。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (4件) 図書 (1件)
システム制御情報学会論文誌 18・4
ページ: 157-165
Automatica 42・5
ページ: 741-746
Proc. 16^<th> International Symposium on Mathematical Theory of Network and Systems (MTNS2006, Kyoto)
ページ: 1089-1095
Proc. 45^<th> IEEE conference on Decision and Control
ページ: 181-186