研究概要 |
本研究では、精度の高い新たな部分空間同定法を提案し、さらに、正準相関解析に基づく確率システムの平衡実現に関する研究とH無限大同定の理論を融合して、雑音モデルに周波数制約を与えることができる新しい確率実現の理論を提案することである。本年度の研究成果は以下の通りである。 1.昨年度の研究で実データをもとに作成した高圧蒸気コンデンサプラントのモデルを用いて、レファレンスガバナに基づく制御則を導き、実プラントのテスト運転によってその有効性を確認した。 2.有限時間長のデータに基づく確率実現問題をヒルベルト空間において考察して、平衡確率実現によって求められた状態空間モデルの安定性と最小位相性を新たに証明した。これによって、平衡確率実現がシステム制御論的にみて良好な性質をもつことが明らかとなった。 3.直交分解を利用した閉ループ同定のアルゴリズムを新たに提案した。またこの方法がVandenHof(1993,オランダ)によって発表された2段階法の部分空間法への拡張であることを示した。 4.結合入出力法を利用したフィードバック確率システムの実現問題に対して、逆システムの確率実現を考察することにより、従来フィードバックシステムの可同定性の段階で停止していた研究を前進させることができ、その結果新たなフィードバック確率実現理論を導くことに成功した。 5.H無限大フィルタと確率実現理論を組み合わせることにより、確率実現理論の一般化を行いその結果を利用して、モデル集合を同定する新たな方法を提案した。
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