研究概要 |
本研究の目的は,制御対象の動特性に大きく影響する時変パラメータの実時間情報にあわせて制御器を変化させるゲインスケジューリング(以下GS)制御の特徴を最も有効に活かすために不可欠な「様々な局面,状況における可変制御のためのモデリング手法の開発」と,そのモデリングにもとづいた「非線形・時変制御対象の様々な情報をうまく活用した可変制御系構築手法の開発」であった.このために設定した中間研究目標のひとつである 「離散的な動作点における動特性データからのLPVモデリング」 に関して,未知制御対象パラメータのスケジューリング変数に対する変化率の上下限のみが既知という仮定の下で,制御対象の不確かさと制御のしやすさ(ロバスト性)を考慮して同定点を決定する手法を開発し,数値例を用いてその有効性を検証した[1].さらに計算上の工夫を施すことで,そのアルゴリズムの高速化が可能になり多数のパラメータがスケジューリング変数とともに変化するような制御対象への実用的な応用が可能であることを示した.またこの方法を非線形システムの軌道制御に応用し,軌道上の線形化システムの計算点あるいは同定点の数を減らす効率的なモデリング手法となることを示した[1]. 今年度は,生体システムや適応・推定機構や学習に関する文献の検討やこの分野の諸研究者の意見を通じてそれらの知見を活かしながら,時変パラメータを有する系の制御に関する実際的で有効な方法を探ってきた. その一環として,通常のエントロピーを1パラメータで拡張したTsallisエントロピーと呼ばれる量の最大化によるパラメータ推定に関する性質の検討をおこなった[2]. [1]小原,久保田,吉田,ロバスト安定性を考慮したLPVモデルの同定点設計の効率化と非線形システム軌道制御への応用,計測自動制御学会 第6回制御部門大会資料533-536(2006) [2]小原,Tsallis相対エントロピーの勾配流について,信学技報NLP2006-38,25-30(2006)
|