近年、CPUを高速化する手法として動作周波数を上げる方法が限界に達し、1個のCPUに複数のコア(演算処理の中心)を搭載する方法(マルチコア)が主流となった。本研究では、マルチコア・プロセッサを活用する並列計算手法および高速ネットワークで接続された複数台のコンピュータを活用する分散処理手法を確立し、制御系の解析、設計、シミュレーションを効率的に実行できるCADシステムを開発することを目的とする。具体的に以下の内容を実施した。 1.マルチコア・プロセッサの性能を活用できる制御系CADシステムの開発 (1)マルチコア・プロセッサにおいてマルチスレッドによりJavaプログラムを高速化する方法について検討し、行列の基本演算の高速化を実現した。 (2)マルチコア・プロセッサを搭載した計算機にメモリを増設し、64ビットOS上で64ビット対応のJavaを用いると、並列処理の性能が32ビット環境より大幅に向上することを確認した。 (3)申請者が開発した科学技術計算ソフトウェア(MaTX)のJava数値計算エンジンが利用する数値計算クラスの一部を並列処理に対応させることで、計算処理の高速化を実現した。 2.制御系設計プロセス全体を支援する実用的な制御系CADシステムの開発 (1)電子部品、機械部品を用いて倒立振子と接続し、実験システムを構築した。そして、MaTXのリアルタイム処理機能を利用してリアルタイム制御環境を構築した。 (2)制御系の解析、設計、シミュレーションからリアルタイム実験までをシームレスに実行できる環境を構築し、問題解決型学習として実施しているプロジェクトで使用し、その有効性を確認した。
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