研究概要 |
平成18年度においては,ポーラスコンクリートの有する吸音機能と水質浄化機能に関する研究を行った。まず吸音機能については,道路交通騒音の低減が可能なポーラスコンクリートの開発を目的として,インピーダンス管による垂直入射吸音率のデータの収集や吸音壁の等価騒音レベル低減効果に関して,実験的な研究を行った。その中で,ポーラスコンクリート壁を作製するにあたって用いた火山性軽量骨材のぼら,石灰石およびフェロニッケルスラグ(以下,FNSと記述)の3種類の骨材ならびに2種類の目標空隙率20%と30%のポーラスコンクリート壁を作製し,騒音低減効果に及ぼす影響を検討したものである。騒音低減効果の検討にあたっては,普通騒音計を用いて得られた100〜2000Hzの範囲の各1/3オクターブバンドの周波数の等価騒音レベルを用いている。また,別途作製したポーラスコンクリートに対して,インピーダンス管による垂直入射吸音率も測定し,吸音壁から得られた等価騒音レベルとの関連についても検討を加えている。また、水質浄化機能については、実験室内に設置したポーラスコンクリート供試体に人工汚水を流入させ、人工汚水中に含まれる全窒素(T-N)、全有機炭素(TOC)および全リン(T-P)の除去効果を検討した。さらに、実河川での適用性についても検討を加えた。 本年度の研究から得られた結果を要約すると以下のとおりである。 (1)使用骨材の種類別に検討したところ,粒径が2.5mm程度のFNSを用いた壁の騒音低減効果が最も高くなった。これは粒径が他の骨材よりも小さいために空隙径が小さくなるとともに,空隙率も他の骨材の場合より小さくなった影響である。 (2)ぼらおよび石灰石を用いた壁の騒音低減効果がFNSほど大きくないのは,これらの壁の内部空隙を音が透過する影響によるものと考えられる。すなわち,ぼらおよび石灰石を用いた場合の垂直入射吸音率は,500Hz近傍で第1の吸音ピークが生じているものの,この周波数域での壁の等価騒音レベルの低減量がそれほど大きくないことから,壁内部の空隙を音が透過していると考えられる。 (3)同一骨材を使用した場合,空隙率が小さい方が等価騒音レベルの減量は幾分大きくなる傾向が認められた。 (4)実験室内では、TOCを60〜80%,T-Pを20〜40%,T-Nを90%程度除去できた。これに対して,実河川ではT-Pについては実験室内とほぼ同様の結果を得ることができたが、T-Nについては高い除去率を得ることはできなかった。今後の課題としてさらに研究を進める必要がある。
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