研究概要 |
岩手県紫波町の架設後24年度経過した2連単純活荷重合成鋼鈑桁橋である下梅田橋(支間長22.74m)において,平成17年11月に詳細な実橋載荷試験を実施した.本年度の静的載荷試験では,20tfトラックを2台用意し対象橋梁の各主桁に最大応力が発生するように載荷させ,橋梁全体のひずみや変位を計測するとともに,支点の水平変位や支点近傍ウエブのひずみを多点計測した.その結果下梅田橋では可動支点が経年劣化や機能不全のため水平移動拘束されて支点部からかなりの範囲にわたって主桁に圧縮ひずみが発生していることが分かるとともに,それらの支点近傍の応力状態がほぼ明らかになった.その後支点近傍のひずみ実測値を用いて橋梁全体の応力状態を再現し健全度診断ができないかを梁理論解析及び3次元FEM解析を用いて検討した.次に動的載荷試験では,対象橋梁をトラック車両走行により振動させて,その揺れ方を加速度計により計測した.計測加速度波形から実稼動モード解析などを用いて実測固有振動数を求め,梁理論及び3次元FEM固有振動解析値と比較することにより橋の健全度評価を試みた.その結果,静的載荷試験より得られるひずみ実測値(梁理論が成立する支点近傍点)と動的載荷試験より求まる実測基本固有振動数を用いて既設鋼鈑桁橋の可動支点部の拘束状況と経年劣化度を同時に判定する簡易健全度評価手法を提案した.また,支点拘束された支点近傍では,高い圧縮応力が生じるため通常交通状態での疲労破壊の可能性を検討するため,平成17年12月に岩手県川井村の2連単純活荷重合成鋼鈑桁橋である笹平橋(支間長22.5m)で,支点部に着目した3日間の応力頻度測定を実施し支点部の疲労寿命を求めた.本年度の研究結果より2連単純鋼鈑桁橋の支点部挙動には橋脚が大きな影響を与えていることが分かったので,今後の実橋載荷試験ではこの点にも考慮した検討を行いたい.
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