研究概要 |
昨年度と同様に岩手県紫波町の架設後25年度経過した2連単純合成鋼鈑桁橋である下梅田橋(支間長22.74m)において,平成19年7月に詳細な実橋載荷試験を実施した.本年度の静的載荷試験では,15tf,20tfトラックを対象橋梁の計測径間および隣接径間に移動させながら載荷させ,2径間にわたる主桁のひずみや変位の静的影響線を計測した.同時に,桁端部ソールプレート近傍のひずみを多点にわたり計測した.それらの結果とFEM解析結果を比較検討することにより桁端部ソールプレート近傍の複雑な応力状態を明らかにした.また、支承直上とソールプレート端付近上に高精度傾斜計を設置し,支承回転角とソールプレート端の傾斜角を計測した.その結果から支承が水平移動拘束されても実橋載荷時に支承回転角が発生していること,ソールプレート端付近の傾斜角は厳密には支承回転角でないことが分かった.次に動的載荷試験では,常時微動測定,トラック走行試験を行い,それらの試験結果と過去2年間の試験結果を比較検討することにより,トラック車両の荷重,速度等が下梅田橋の動的特性にどのような影響を与えるかを明らかにすることができた.また,動的載荷試験の活用として、支点拘束を有する既設鋼鈑桁橋が走行荷重を受ける場合に支点近傍でかなり大きな動ひずみを受けるので,この実測動ひずみを用いて簡易的に走行荷重を推定する手法を提案し,実用性を確認した.昨年度,静的載荷試験より得られる支点近傍のひずみ実測値と動的載荷試験より求まる実測基本固有振動数を用いて,既設鋼鈑桁橋の可動支点部の拘束状況と床版の経年劣化度を同時に判定する簡易健全度評価手法を提案した.本年度は,提案手法の有効性を確認するため,支点拘束を有する既設鋼鈑桁橋を対象に,劣化状態を変化させたFEM解析を行い,支点拘束の無い場合と比較しながら劣化進行によって生じる力学的性能低下に及ぼす劣化範囲や剛性低下の影響を数値解析上から明らかにした.
|