研究課題/領域番号 |
17560420
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
井上 凉介 茨城大学, 工学部, 助教授 (20143141)
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研究分担者 |
横山 功一 茨城大学, 工学部, 教授 (20302325)
呉 智深 茨城大学, 工学部, 教授 (00223438)
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キーワード | タンク / 長周期地震動 / スロッシング / 構造-流体連成解析 / 免震 / 制震 / 2003年十勝沖地震 / K-net |
研究概要 |
(1)線形連成解析:研究協力者の坂井ら(1980)による線形化した流力連成振動解析の手法を用いて、容量6万5千klの、シングルデッキとダブルデッキの2つの浮屋根モデルに対してSv=100kineの地震力に対する浮屋根の応答(変位、動液圧、曲げモーメント、応力など)を計算し、応答に何が効くかをパラメトリックに調べた。その結果、(1)1次固有周期、1次の液面最大上昇量は、屋根の剛性にあまり関連せず、自由表面の解析解で近似できる、(2)シングルデッキ2次モードではデッキ板に大きい変位(したがって膜力)が生じ、ポンツーンの座屈の原因となる、(3)同1次モードでポンツーン外側に働く圧縮応力は96MPa程度、(4)ダブルデッキの2次モードでは固有周期が短くなり、デッキに大きい応力が発生するので、その帯域の成分を多く含む地震動に対してはこの形式を採用したことが反って危険になることも有り得る、などの諸点を定量的に示した。 (2)商用の非線形FEM構造解析ソフト(ABAQUS)による解析:ポンツーンの座屈を防ぐための、2つの補強案を、ポンツーン部の一部を切り出して、一方向解析(相互作用の結果を流体側にフィードバックしない)により検討した。(1)リブによる補強効果:過大なスロッシングが発生すると仮定して、切り出した部分に周方向の単純曲げ荷重(が加わるように下向きの強制変位)を加えていったとき、まず「線形座屈解析」を行い、引き続き「複合非線形性」を考慮した「Riks解析(弧長増分法の一種)」を行い、上板の局部座屈から崩壊に至るまでの過程を追い、ポンツーンの耐荷力を求めた。(2)免震ゴム:バルクヘッド部に免震ゴムを配し、ポンツーン部に、荷重でなく下向きの「強制変位」を加えたとき(注:浮屋根の応答は屋根の剛性に依存するため)の免震ゴムの効果を調べた。このとき上板に発生する圧縮応力度は大幅に低減し、免震ゴムが有効であることが示された。 (3)長周期地震動特性の簡単なパラメータによる予測法の検討:現在同帯域の強震動予測で主流の3次元差分法によるものがスロッシングの応答解析を簡便に行うなどの工学的目的には適さないため、表記の予測法の検討を行った。具体的には、2003年十勝沖地震(M8.0)の余震群によるK-netなど高ダイナミックレンジ、高密度、広帯域の観測網の(盆地上の)苫小牧近傍での記録を使って、(1)同近傍の揺れやすさ〔半経験式(工藤1989)と観測スペクトルの比、および岩盤での観測スペクトルとの間の比など〕を求め、(2)各地点の観測スペクトルにおけるコーナー周期のスケーリング則が揺れやすさに及ぼす影響を検討し、(3)Love波励起関数(工藤1989)が伝播経路の地下構造を最新のものに置き換えるとどの程度変わるか、などを検討した。この結果、(K-net観測点から少し離れているが)気象庁苫小牧観測点における一倍変位強震計記録を用いたの揺れやすさ(座間1998)に比べ周期7〜8秒において大きい値が得られ、本震時における苫小牧での石油タンクの被害とより合うようになった。
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