研究概要 |
微動の工学的な利用の見地から,微動H/V法を用いて表層地盤のS波地震応答特性を簡易に推定する手法の提案を目的としており,研究の初年度として次の成果を得た. (1)岡崎平野や豊橋平野の反射法測線上の地点,新規KiK-net地点,高密度強地震観測網地点の合計約80地点において微動を観測し,これまで不足していた卓越周波数が1Hz付近および10Hz以上の地点のデータを取得し,データベース化した. (2)岐阜県東濃地域で(財)地震予知総合研究振興会・東濃地震科学研究所が比較的狭い地域に設置している高密度強地震観測綱では,2004年9月5日に発生した紀伊半島沖地震(M7.2)の地震動がほぼ全点で観測された.まず,これらの観測点における強地震波形を収集・解析し,各地点の観測に基づく地震増幅特性を明らかにした.次に,以前に提案した微動H/V法を用いた簡易推定法を各地点に適用して地震増幅特性を推定した.両者を比較した結果,簡易推定法は観測値を標準偏差±0.5以内で推定できることが判明した. (3)KiK-netのボーリングデータから推定される理論入射地震応答と地震動H/Vおよび微動H/Vとの関係について検討し,例えば,理論入射地震応答H/Vと地震動H/Vの間には良い対応関係が認められること,基盤と地表間のS波伝達関数のピーク周波数からP波伝達関数のそれを精度良く予測できることなどを明らかにした.これらの結果は,より信頼性の高い簡易予測法の提案に反映できると考えられる.
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