研究概要 |
微動の工学的な利用の見地から,微動H/V法を用いて表層地盤のS波地震応答特性を簡易に推定する手法の提案を行い,実測データ等に基づきその有用性を検証した. (1)これまで観測した微動データのうち,KiK-net強地震観測地点176,K-net強地震観測地点11,濃尾平野の強地震観測点51および東濃高密度強地震観測地点39の合計277地点のデータを再解析し,微動H/Vスペクトル比と地表地震動のH/Vや地表と地下の間の地震動伝達関数との関係を詳細に調べた結果,微動H/Vスペクトル比は,表層における水平動と上下動の応答特性の比に近似することを再確認した. (2)表層の地震応答特性の簡易推定法に関して,微動H/Vのピーク周波数とピーク振幅を用いる方法,微動H/Vのスペクトル強度を用いる方法,微動H/Vスペクトル比の形状そのものを用いる方法等,各種の手法を検討した.その結果,微動H/Vのピーク周波数とその振幅を用いる手法が,簡易推定法として最も適切な手法と判断された. (3)簡易推定手法の信頼性を検証するため,KiK-netのボーリングデータに基づく理論的地震応答特性と簡易法による推定結果,東濃強地震観測点と濃尾平野の強地震観測点における2004年紀伊半島沖地震の観測記録に基づく地震応答特性と簡易法による推定結果を比較したところ,地表における最大加速度の平均値はほぼ1.0,標準偏差は約0.4であった.したがって,推定値の1.4倍を考慮することにより,表層が薄い地盤から厚い堆積層の地盤まで安全側に評価でき,本手法は地震応答特性の概査法として,工学的に十分利用可能といえる.
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