研究概要 |
昨今の異常気象による集中豪雨の発生頻度の増加とともに土石流災害の危険性は高まっているにも関わらず,災害予防的な予算は削減されつつある。本研究では,砂防構造物の耐衝撃性能を正確に評価し,ムダのない合理的な設計法の確立に寄与することを目的としたもので,従来の設計法の問題点(土石流荷重の適切なモデル化に関する問題,構造物と土石流の相互作用に基づく動的応答特性が反映されていない点)を,現実に忠実なモデル化を試みた数値解析によって克服し,砂防構造物の安全性照査法の精度を飛躍的に向上することを目指している。 具体的には,平成17年度において以下の成果を得た. 1)粒状体として理想化可能な土石流と構造物の動的応答を統一的にモデル化・解析するためのベースとなる手法として,「粒子法」を固体に適用した衝撃応答解析プログラム(2次元・3次元)を完成させた. 2)2次元粒子法による弾性衝撃応答解析により,固体の動的応答における自由表面境界の取り扱いと解析精度の関係を明らかにした.さらに,弾塑性応答解析を試みて塑性の取り扱いに関する収束性・精度上の問題点を明確にした. 3)実構造である「鋼製枠砂防えん堤」の衝撃応答解析を例題として3次元粒子法を適用し,本研究の目的である土石流と砂防構造の一体解析が可能であることを確認した.現時点では,巨礫単体の衝突を想定しただけのものであるが,平成18年度に土粒子の力学特性を持たせた「粒子」モデルを考案し,土石流の衝突を考慮した砂防構造物の衝撃解析へと拡張することを予定している.
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