研究概要 |
近年,社会資本のひとつである土木構造物の経年劣化が進行している.土木構造物の効率よい維持管理のためには,精度のよい劣化予測・適切な事後評価システムの構築が急務となっている.さまざまな腐食環境下におかれた鋼部材について,綿密に腐食形状の計測し,腐食鋼部材の耐荷挙動特性を把握することは,将来の鋼構造物の余耐力予測・余寿命予測に結びつく基礎資料を与えるものとして重要である. 本研究課題では,特に鋼曲げ部材に着目し,まず実際に腐食環境下にあった鋼部材の腐食形状を,新たに開発した表面粗さ計測装置を用いて,詳細に計測することとした.さらに腐食レベルの異なる5体の供試体について,腐食性状と残存耐荷力との関係を把握するために,曲げ耐荷力実験を実施した.得られた結果をまとめると以下のようになる. 1.実際に腐食環境下にあった腐食程度の異なる5体の鋼部材について腐食形状を,レーザ変位計を用いた表面粗さ計測装置で緻密に計測した.フランジ縁端部に観察された波状の腐食や,皿状の腐食を図化し,精度よく捉えることができた. 2.腐食量と部材の方向あるいは腐食面との関係は,明確な傾向は見られず,より局所的な風向やその他の要因によって腐食が進行するものと考える. 3.腐食した鋼部材を曲げ部材として耐荷力実験を行い,腐食形態と残存耐荷力および終局モードについて考察を行った.フランジ縁端部に波状の腐食を有する部材では,腐食形状によって圧縮側では座屈モードを支配し,引張側では亀裂が発生することで,終局モードに大きな影響を与えた. 4.腐食した鋼部材の曲げ残存耐荷力は,今回の実験の範囲では,供試体の平均腐食率と線形関係にあった.すなわち,部材の平均腐食量が判る程度の計測を行なえば,部材の曲げ残存耐荷力を簡易に評価することが可能である.
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