研究概要 |
本年度は,自由膨張量約4900μのASR損傷を生じたコンクリート中の鉄筋の付着強度ならびにASRによりせん断補強筋が破断したRCはりのせん断耐荷性状を検討した。得られた主な結果は以下のとおりである。 ・D10,D13およびD16鉄筋についてはASR損傷が生じると,最大付着応力度が低下する傾向を示した。しかし,D6の場合ASRコンクリートの最大付着応力度が普通コンクリートより高い値を示しており,鉄筋径に対して8倍程度のかぶりが確保できていれば今回のASR劣化の程度であれば付着強度はさほど低下しないと考えられる。しかし,ASRコンクリート供試体の場合,鉄筋径に対するかぶりが4.5倍(D10)以下であれば,既存のひび割れによる割裂破壊に対する感受性が増加し,付着強度が低下する傾向が認められた。 ・せん断補強筋に破断を模擬した場合,ASR劣化時に主鉄筋に沿ったひび割れの進展が顕著になり,そのひび割れが載荷時に付着割裂ひび割れへと進展する傾向が認められた。また,本実験でのASR劣化の程度であれば,鉄筋破断がせん断耐荷力に与える影響は小さく,鉄筋破断による耐荷力の減少よりケミカルプレストレスによる効果が上回る結果となった。
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