研究概要 |
今後30年以内に高い確率で発生すると考えられている東海・東南海・南海地震等の海溝型地震に対する対策を適切なものとするため,海溝型地震のやや長周期成分の不確定性を考慮した沿岸域防災施設の耐震性能評価法について検討を行っている.これまでに実施した地震観測記録の分析により,我が国の沿岸部では,大局的に見ると,内陸部よりも長周期の地震動が増幅されやすい傾向にあることが明らかにされている.これは,沿岸部では内陸部に比べ堆積層が厚い傾向にあることを反映したものであると考えられる.そこで本研究では,中小地震の観測記録から推定さわたサイト増幅特性を用い,盆地生成表面波等の影響も含む形で,想定地震に対する地震動の評価を行う方法に関する改良を行った.主たる改良点は地震動の因果性に関するものである.この方法を,実際に発生した海溝型巨大地震である1968年十勝沖地震および2003年十勝沖地震に対して適用し,その結果を観測記録と比較することにより,手法の適用既について検討を行った.その結果,周期数秒の後続位相を含め,観測された地震動を比較的良好に再現できることを確認した.また,同様の手法を想定東海地震に適用し,震源近傍における強震動の評価を実施した.その結果,想定される地震動は地点依存性が顕著であり,サイト増幅特性の特に大きい地点では,兵庫県南部地震による神戸市内の揺れを上回る地震動も想定されることがわかった.さらに,沿岸地域において顕著である地盤の非線形応答を踏まえた数値解析手法の高度化に関する検討を行っている.上述の手法で評価された継続時間の長い地震動に対する沿岸施設の耐震性について,それらの数値解析手法を用いた検討を行った.
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