研究概要 |
第1に不飽和なシルト質土(サクションが小さい)の浸水時の間隙圧が発生することを確認したが,第2の主題である、微少な間隙圧を無視したCU試験法により「浸水時の強度評価法」を検討した。 (1)成層土模型では上載荷重に匹敵する間隙圧が計測された。しかし、圧密容器での浸水時のコラプスに伴う間隙圧は約30分の1の微少値に過ぎなかった。これは、試料へ浸水させるには間隙空気の脱出を許容する必要があり、メニスカスの形成とコラプス発生時の人為的な空気閉塞タイミングが難しいことに起因すると考えられる。 (2)一面せん断試験とリングせん断試験により、前者はひずみ制御のみで後者は応力制御によっても非浸水試料と浸水試料のせん断試験挙動を試験した。特に「非浸水試料」と「その強度の6割までせん断動員した時点で浸水した浸水試料」に対して、定圧試験と定体積試験を垂直応力50kPaまでの範囲でせん断試験した成果は、 (1)浸水時直後にせん断応力は消失してゼロになるが、ひずみの増加につれて若干回復すること、 (2)浸水後のせん断強度は非浸水試料に較べて内部摩擦角で27.1度から20.4度まで低下すること、 (3)定体積試験では、土試料の密度に依存するが、緩い土試料では体積を一定に保つために垂直応力(平均応力)を著しく小さく制御せねばならないため、せん断強度は低下する。しかし、強度定数(粘着力c、内部摩擦角Φ,CU試験・全応力表示)は定圧試験結果とほぼ同じ値が得られた。 (4)「せん断強度は、せん断中の内部応力変化と体積変化に大きく依存する」ことに注目する必要がある。 (3)前項で推論された結果を、実験室内で模型の小型斜面で検証するべく、数値シミュレーション計算モデルの構築に努めたが、計算結果が得られるほどに完成せず断念した。従って、結論でなくこれからの見通しを以下に略述して参考に供する。 (1)密度の高い土質ではコラプスが起こり難いため浸水の影響は少ない。緩い土質ではコラプスが起こりやすい。 (2)両者に通用し易いせん断試験は、浸水に伴う応力変化に追随できる「定体積試験」が推奨されると考える。
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