研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、様々な植生上における蒸発散量、顕熱フラックス、CO2吸収量の時空間スケール(周波数)依存性を明らかにすることにある。最終年度となる本年度は、(独)森林総合研究所富士吉田試験地の赤マツを中心とする森林において行った集中観測から得られたデータの解析を行い、Surface Renewal法と呼ばれる地表面フラックス算定委方法の適用を行った。Surface Renewal法とは、地表面近傍の大気での熱・物資輸送のメカニズムに関する概念的なモデルを、フラックス算定手法として定式化したものである。本年度はこの手法を上記データへ応用する折に必要な、顕熱を輸送する乱流の特徴的な鉛直スケールの表現について、検討を行った。さらに森林上のデータの解析との比較を目的として、様々な地域の多種多様な地表面上で得られたデータから、熱・水蒸気・二酸化炭素輸送の時空間スケール解析を行った。モンゴルにおける草原・森林の観測データから、蒸発散量、顕熱フラックス、CO2吸収量の年内変動の要因を解析した結果、森林と比較して草原における地表面熱収支およびCO2吸収量が、降水量と降雨後の土壌水分量に大きく依存することが明らかとなった(Li et al, 2007)。チベット高原上における観測データをもとに、境界層対流スケールの対流活動が温度と湿度の変動に影響を与え、ポーエン比法のように両者の相似性(渦拡散係数の同一性)を用いた計測手法の精度を悪くすることを明らかにした(Asanuma et al, 2007)。我が国の水田上における観測データにウェーブレット変換を適用し、乱流とメソスケールの境界域において輸送される顕熱および水蒸気フラックスの性質を明らかにした(Saito et al., 2007)また、以上の成果について、関連学会(水文水資源学会、農業気象学会)などにおいて研究発表を行った(岩田,ほか、2007a,2007b,齋藤ほか、2007a,2007b,浅沼ほか、2007a,2007b)
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