研究概要 |
「河川における旧流路に取り残された湿地の自然再生」や,「砂礫河原の河道内樹林化」に対する対策は,生育場が異なるものの,「洪水攪乱が植物の生長・遷移へ与える影響」と「植物が洪水へ与える影響(抵抗特性・土砂堆積に与える影響)」という相互作用系の解明にもとづく対策立案という共通の視点で考える必要がある。本年度は,1)砂礫河原に早期出現し,拡大・繁茂能力のある植物種の洪水攪乱後における再生長・繁茂特性の分析、2)洪水を模擬した人為攪乱(刈取り,なぎ倒し)後における湿地植物の再生長・繁茂特性の分析、3)植物の繁茂状態の相違点を踏まえた洪水時の粗度特性,土砂堆積特性の解明を行った。研究対象地点(秋が瀬公園、熊谷中州)の植物調査・環境条件調査を行い、小型湿地植物(ノウルシを対象とした)の生長特性(生活史と光合成蒸散特性)を反映したモデル解析を行ない、小型植物の存在に必要な洪水攪乱条件を整理した。ヨシ,オギに対し地上部の刈取りとなぎ倒しを行い,ダメージを受けたあとの地上部と地下部の物質移動特性を調査した。ダメージによる影響は地下部バイオマスの減少量,物質移動量をもとに把握した。また、砂礫河原においては、大きな株を形成し土砂を大量に堆積させるシナダレスズメガヤと,ランナーにより拡大するツルヨシの生長特性を調査し、さらに、ツルヨシやシナダレスズメガヤの粗度特性(株の大きさ(株の直径,空隙率)、抽水・沈水状態)を踏まえ、水理模型実験により粗度周辺の流れ構造、土砂堆積特性を把握した。水理実験と数値解析結果を踏まえ、植物による土砂の移動限界の変化を解析した。ヨシ・オギの生長解析モデル(既存)をなぎ倒し等の部分ダメージを受けた場合の解析手法へと改良した。ツルヨシの生長モデルを洪水攪乱影響による生産量変化を解析できる形で作成した。
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