研究概要 |
土砂生産を常時のものと異常時のものに分けて検討した。まず,常時の土砂生産量の年変動特性や季節変動特性に着目して土砂生産量の長期観測結果を解析した。その結果,土砂生産量の変動特性には,不安定な裸地から安定な裸地へと変化する長期変化と,春季から冬季へと土砂生産量が減少する季節変化の二重構造をしていることがわかった。また,土砂生産量と降雨量との相関はあまり高くなく,春季の土砂生産量は気温と相関があり,凍結融解作用が土砂生産量を支配する重要因子であることがわかった。また,凍結融解の履歴が土砂化の量を左右することも示された。常時の土砂生産量は,風化基岩が毎年土砂化する量に大きく支配されるので,その量を見積もるためのモデルの提案も行った。すなわち,地中内の熱収支式から凍結深を求め,凍結融解の履歴回数により土砂化する量を見積もるという方法である。田上山地での観測結果から,土砂化のための凍結融解回数を10回とすることで,土砂生産量をよく説明することができた。ついで,異常時の土砂生産については,これまでに開発した斜面の崩壊発生プロセスモデルを改良し、それを2004年と2005年の斜面崩壊の事例に適応し,その解析精度を検証するとともに,いくつかの崩壊事例を比較して,その特性を土壌条件,降雨条件に着目して解析した。その結果,2005年の竹田市の崩壊は,中程度の雨が長期間続くことによって,保水性の高い土壌に,多量の水が貯留され,流動性の高い崩壊が発生したものと推察された。
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