研究概要 |
1.常時の土砂生産の確率的評価法 常時の土砂生産量を決定付けている風化基岩の土砂化は凍結融解作用によるところが大きい。そこで,気温、風速、日射などの気象庁が公表している気象データと斜面方向、斜面角度などの地形データを用いた風化基岩の凍結融解モデルを作成した。これにより、全国のほとんどの場所で風化基岩の凍結融解過程を推定することができる。このモデルは滋賀県田上山地や岐阜県高山市高原川流域に適用され、観測値との比較により妥当性が検証された。凍結融解による土砂化のプロセスのモデル化についてはまだ問題点があるが、地球温暖化による気象条件の変化や気象データを確率変数として与えることにより、将来の土砂生産量の推定や土砂生産量の確率的評価が行える。 2.異常時の土砂生産の確率的評価 これまでに開発した斜面の崩壊発生プロセスモデルを使って、とくに土質強度や降雨条件の違いによって崩壊発生条件や崩壊規模などがどのように異なるのかについてシミュレーションにより検討した。その結果、粘着力で斜面が安定しているような場合、崩壊発生時刻が遅く、長い崩壊が生じ、内部摩擦角で安定している斜面では、短い崩壊が生じることがわかった。この結果から、前者では流動性の高い単一崩壊が生じ、後者では段階的崩壊が生じることが考えられる。地球温暖化を考慮して、降雨条件が変化したときの斜面崩壊について、大分県竹田市の斜面スケールの領域や奈良県十津川村の流域スケールの領域に対してシミュレーションを行い、降雨パターンと崩壊形態の関係を見出した。 3.研究の総合化 以上のように、常時と異常時の土砂生産現象の本質的な部分を明確にしながら、常時の土砂生産量の算定手法や斜面崩壊発生プロセスのモデルを開発することにより、外力を確率変量とした土砂生産量の確率的評価が行えるようになった。
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