本研究は、乾燥・半乾燥地域で生起している地面蒸発、それに伴う塩類集積の仕組みを、特に非一様場を対象にして実験を介して考究するものである。 非一様な蒸発場を、PVCパイプ(直径10cm、長さ100cm)に市販の赤玉土を充填して作り、重量計上に設置した。土層には地下水面が存在しない条件と存在する(深さ30cm)条件を設け、また前者では蒸留水を、後者では高濃度の食塩水を用いたが、いずれも脱水平衡を初期水分量分布とした。さらに、各々2本の土層を用意し、熱照射を層上表面に与えた条件(660W/m^2)と、与えない条件で実験を約3週間行った。これら実験は温度25℃、湿度20%に固定した恒温恒湿室で実施したので、蒸発場の気象条件はこの温度、湿度となる。 地下水面を有しない場合: 1)土層内の計測水蒸気密度の分布形状より蒸発域(面)の位置はほぼ特定できる。熱照射を与えた場合、蒸発面は経過時間の平方根に比例して下降し、実験終了時には深さ3.5cmに達したが、熱照射を与えない場合の移動は緩慢で、最終でも深さ2cmとなったので、熱照射の有無は蒸発面発達状況に顕著な影響を及ぼすといえる。2)これら一連の進行状況は蒸発量の経時変化や塩類集積の進行にも対応し、熱照射は蒸発や同集積を促進させる。3)実験終了時の重量含水率の分布形状は、深さ約4〜5cmより上方にfield capacityより急減を示したが、その程度は熱照射によって促進される。 地下水面を有する場合: 1)実験開始直後の蒸発強度は大きく、さらに熱照射はそれを増大させるが、時間と共に熱照射の有無による差異はなくなる。2)水蒸気密度分布は実験開始後1日程度でほぼ固定されるようになり、蒸発面の深さは熱照射の有無に関係なく、1〜2cmとなる。3)実験終了時の水分量分布は、深さ3cmより上方に向かって急減するが、その程度は熱照射を与えた方が顕著である。
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