研究概要 |
乾燥・半乾燥地域において、蒸発・塩類集積は解明されねばならない重要な現象である。本研究では、空隙二重構造(大空隙、小空隙)を有する赤玉土層を非一様土壌として着目し、蒸留水や高濃度の食塩水で湿潤させたこの土層を用いて蒸発実験を、恒温恒湿室(25℃、20%)で実施した。特に、地下水面、日射、乱れた地表風(大気乱流)の蒸発に及ぼす影響を調べるため、特定の場合に、このような条件を土層内や表面に与えられた。蒸発実験を通して以下のことが分かった。 1.小空隙(micro-pores)は、下方にある土壌水の蒸発域への水供給のルートとしての役割を示す。この役割は、蒸発強度を相対的に高い値にする。 2.大空隙(macro-pores)は地表風の乱れを容易に層内に進入させるルートの役割をもつ。そして、このことは、例えば蒸発域が4〜5cmに降下した際、同効果が無視できる場合に比し、蒸発強度を2倍程度高めるなど、土層内の水蒸気輸送に分子拡散的なもの以外に、乱流拡散的な効果を導く。従って、蒸発過程において、地表風の水蒸気移動に及ぼす影響を考慮することは重要である。 3.土層表面への熱照射は、ある深さにピークをもつ水蒸気密度分布を形成する。このピーク地点は蒸発域に対応する。蒸発によって生じた水蒸気は上方と下方に向かって移動する。下方に移動する水蒸気は深部で凝結し、従って、蒸発-水蒸気輸送-凝結というプロセスで、深部への土壌水の輸送機構が現れる。 4.蒸発に伴う塩類集積(塩濃度の増大)はある深さより上方に向かって急に顕著となるが、この深さはdrying frontの上端にほぼ一致する。また、当該の土壌の場合、濃度が急増する場所より下方の領域での塩濃度(Na^+,Cl^-)は、初期に与えた濃度より低くなるという分布特性を示す。これは、土壌粒子表面での吸着、イオン交換によるものと考えられる。
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