本研究はクオリティ・オブ・ライフを評価するために札幌市の除雪事業を例に品質機能展開法(QFD法)を適用し、行政活動の改善方策を明らかにしたものである。行政活動は企業活動と異なり代替性がないものもあり、本研究では市民の視点と技術の視点を組み合わせた「総合要求品質重要度」を作成し、行政活動の範囲と留意点を明らかにした。 QFD法は日本で開発され、JISQ9025として日本工業規格に登録されている。また米国の自動車産業が採用するQS9000では、部品製造企業に品質管理システムとして導入が義務付けられており、世界中で顧客ニーズを的確に反映した合理的な製品開発の計画および品質管理手法として広く採用されている。 本研究では最初に顧客志向評価モデルであるECR法を用いて札幌市の除雪事業の現状分析を行い、冬期業務交通問題点の順位を求めた。その結果、「冬期遅れ時間」が一番重要視されたことから、都市除雪事業のアウトカム指標として「冬期遅れ時間」を設定した。また、冬期遅れ時間に対する満足度・不満足度調査から、二つの顧客不満足(アンサティスファクションとディスサティスファクション)を用いた目標サービスレベルの設定を行った。 QFD法を札幌市の除雪事業に適用したことにより、市民が要望する除雪サービスと各種工法への予算配分との比較分析を行うことができた。その結果に基づき除雪事業の改善方向性を示し、効率的な除雪を実現するためにボトルネックとなっている技術の特定と、同じ予算額で市民の便益を最大化する除雪工法を提案した。 今後の課題として、QFD法による除雪サービスの改善が利用者の満足度をどれだけ向上させたかの検証、他の行政サービスへのQFD法の適用可能性、ならびに他の品質管理モデルの行政への適用可能性などのあることを示した。
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