本年度においては、移動のバリアの量的な総合化に関する既往研究の整理、車いす使用者の日常生活での交通で遭遇するバリアとその目的地・利用頻度・経路に関する調査、そして、バリアの影響モデルの構築と一対比較法を用いたモデルパラメータの推定を行った。 車いす使用者の日常生活で遭遇するバリアの調査は、7名の外出頻度の高く常時車いすを使用している被験者からのヒアリング調査によった。その結果、バリアの種類としては、既存の移動円滑化基準の中で言及されておらず、また既往研究で触れられることの少ないものとして、歩行者や自転車の交通量に関するもの、踏切、障害物側方の有効幅員が目視で判断しにくい場合、などが比較的重要な要素として存在していることが明らかになった。 次に、これらの要因を含めた各種バリアの影響度に関し、それと等価な平坦区間を遠回りする所要時間で表現するモデルを構築した。さらに、このモデルのパラメータ推定については、仮定した2つの区間の選択を問うアンケート調査をもちいて、これを選択現象と考えて2項選択ロジットモデルに当てはめて推定することとした。アンケート調査は、日常車いすを使用する人を対象に郵送等で189部配布した。そして回収された有効回答92票を用いて分析を行った。この結果、これらのバリア要素の行動への影響の大きさについて、統計的な有意性もあわせて明らかにした。さらに、電動車いす使用者と手動車いす使用者との違いについても明らかにした。
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