平成17年度は、移動のバリアの量的な総合化に関する既往研究の整理、車いす使用者の日常生活での交通で遭遇するバリアとその目的地・利用頻度・経路に関する調査、そして、バリアの影響モデルの構築と一対比較法を用いたモデルパラメータの推定を行った。次に、これらの要因を含めた各種バリアの影響度に関し、それと等価な平坦区間を遠回りする所要時間で表現するモデルを構築した。まず、アンケート調査を、日常車いすを使用する人を対象に郵送等で189部配布し、回収された有効回答92票を用いて分析を行った。この結果、バリア要素の行動への影響の大きさについて、統計的な有意性もあわせて明らかにした。さらに、電動車いす使用者と手動車いす使用者との違いについても明らかにした。 平成18年度は、まず、道路整備のバリア要素の主観的評価について高齢者を対象に新たに調査を実施した。次に、生活圏域単位での高齢者の外出量の調査から、潜在交通需要および顕在化率の推定を行った。さらに、当該地区におけるバリアの量の調査を行い、これらを総合化してバリア量と顕在化率の関係の定量的なモデル化を行った。加えて、研究成果の取りまとめを行った。紙面での一対比較調査では、各種バリア要素と等価な平坦区間を遠回りする所要時間で表現するモデルが構築できた。そして、経路のバリア量の評価値を求め、これと先に求めた顕在化率との関係を統計的に分析することによって、徒歩での買物交通に関する潜在化に関して、バリア要素の影響を明らかにした。
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