前年度に、街路網の1リンクにおいて発生する旅行時間を人工知能モデルによって推定する方法について検討したが、入力として光ビーコンから得られる1周期前の旅行時間を採用していた。しかしながら、信号制御パラメータ最適化過程においてはその入力変量をリアルタイムに近い形で入手することが困難であることが明らかとなった。このことを受けて今年度新に1周期前旅行時間に代わって交差点間距離を用いる方法について検討を加えた。人工知能型モデルとしては、前年度と同じ3層のニューラルネットワーク(NN)とウェーブレットニューロンモデル(WV3)の2つを考えた。シミュレーションによるデータで実証的検討を行った結果、WV3を用い入力として当該リンクと上流交差点流入リンクの交通量、当該リンク長、オフセット、当該リンク両端交差点青信号時間の8つすべてを採用する方法が最も優れた推定を行うことが明らかとなった。 学習済みモデルの信号制御への実装テストについては、5交差点が直線状に連なる街路網を対象街路網として用いた。信号制御最適化については総旅行時間最小化を図るモデル入力の逐次的修正という勾配法をベースとした方法を開発した。制御対象期間は19周期(約48分)で、1周期ごとの街路網への流入交通量を適切に与えるとともに信号制御パラメータ(初期値)の設定を行ってシミュレーションを実行した。次いで得られた交通量データをモデルに入力して求められた最適信号制御パラメータを用いて再度シミュレーションを実行した。その結果求められた総旅行時間を、複数の比較制御パターンの総旅行時間と対比したが、それらいずれの値をも下回わり開発方法の有効性を確認することができた。
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