研究概要 |
既に人口減少が始まっている日本において,都市レベルでも人口減少に転じるところが増加してくる.しかし,従来の都市モデルやそれが基本とする都市経済学的な理論は,都市の拡大メカニズムを念頭においており,人口減少時代に対応できない.本研究は,まず,近畿地方の諸都市を対象に人口減少都市を抽出し,土地利用変化を分析した.都市全体の人口が減少しているにもかかわらず都市計画区域やDIDが拡大している地区を選び,他の地区と年齢別人口構成を比較すると,未だ,20代から30代の第一次持家取得層が縁辺部の拡大地区に持家等を取得していることがわかった.市街地の拡大を防ぎ都市内の緑地空間を守るためには,これらの層を適性に誘導することが必要であり,都心や旧市街地におけるアメニティ性の高い居住空間の構築が望まれる.一方,近畿圏全体で見たとき,阪神地域や京阪地域など,大都市間都市群がその受け皿になると考えられる.これらの都市群は,大都市への近接性が高く,優れた社会基盤蓄積を持っているとともに,まとまった街区単位の建物改築が期待できるからである.また,再結集の対象となる都心あるいは旧郊外部では,小さな単位で土地が市場に供給されるため土地利用取引が小規模な地区単位となり,さらに,土地市場に供給されるタイミングに大きなばらつきがあることにより均衡フレームや集計的な取り扱いが困難となる.そこで,詳細な地区での家族,コホート単位の人口推移を改めて捉え直し,アンケートの結果を踏まえた人口予測モデルを構築した.その結果,社会基盤事業が行われた直前・直後から時間変化に伴って,詳細な地区ごとにその土地条件・住宅条件に応じた人口や家族・年齢構成が変化し,予測では,最も転入・転出が激しい20代の人口だけでなく,介護需要や地域コミュニティの形成などの新たな動きを見せる高齢者層の変化に対して,従来のモデルでは予測困難なことがわかった.
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