自然光の温室に設置した小型ライシメータ(黒ボク土)に飼料イネのクサホナミを植栽し、模擬汚濁河川水や畜産排水処理水を自動給水システムにより一定量流入させた。流入方式としては、通常の水田を想定した表面流れ方式と暗渠設備のある水田を想定した表面湛水状態での鉛直浸透流れ方式を設定した。流出水ならびに間隙水中の栄養塩およびエストラジオールなど内分泌撹乱物質をモニタリングすることにより、これら物質の除去効果と挙動を解明した。さらに、各成長段階におけるバイオマスの測定を行うとともに、刈り取り時における植物体については、地上茎、葉、籾中の栄養塩濃度を測定した。まず、浸透流入方式と表面流入方式の比較について窒素に関する調査結果をまとめる。窒素除去率については、表面流より浸透流の窒素除去率が高く、模擬河川水流入系の浸透流れ方式が最も窒素除去率が高かった。浸透流の系ではイネ有無の差が表面流系よりも明確に現れた。河川水を流入した系では表面流よりも浸透流の除去率がイネのある系では5.1倍、ない系では9.2倍高くなった。また畜産排水処理水を流入した系ではイネのある系では4.0倍、ない系では5.3倍高くなった。吸収した窒素は浸透流系においては80%以上、表面流の系においては90%以上地上部に含まれるため、刈り取って飼料として回収・利用することができる。以上の成果を窒素収支の観点から整理すると、各流入水とも、浸透流においては、イネがある系とない系での流出窒素の差は飼料イネ植物体による窒素の吸収量の差でほぼ説明できることが示唆された。浸透流ではイネのない系でも硝化・脱窒が起こりやすく元々窒素除去率が畜産排水系で60%、河川水系では79%と高いが、表面流ではイネのない系の除去率は畜産排水系で10%から河川水系では16%程度とかなり低いために、イネの植栽による硝化・脱窒反応の影響が大きく現れたと考えられる。
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