バチルス菌(枯草菌)優占で運転されているし尿処理施設の乾燥汚泥と、急速ろ過の浄水汚泥及びキノコ工場廃菌床を、実験室レベルで生ゴミ処理機を使用して中温で混合醗酵すると、当初は廃菌床に由来するカビや各種のバクテリアコロニーが発生するが、2週間以上の培養では、必ずバチルス菌が優占化することを確認(32℃、平板寒天培地)した。この理由としては、バチルス菌が休眠時の芽胞形成に必要なシリカ分を浄水汚泥のシルトから供給できること、バチルス菌(枯草菌)のエサとなるセルロースが廃菌床から供給できることが考えられる。 バチルス菌が、土壌中に1.0E+07個/g程度いると、微生物生態系が安定し、連作障害が解消できるといわれているが、1.0E+08個/g以上のレベルまでバチルス菌が増殖することを繰り返し確認した。 次に実設備を用いた試作試験では、温度管理を確実に行えば生ゴミ処理機と同等のバチルス菌濃度が得られたので、平成18年春に数トンの土壌改良剤を試作し、実農家の協力を得てヤマト芋畑に施用して、実際の畑で連作障害抑止試験を実施したところ、消毒区(マルチングでソイリーン薬剤を注入、殺菌)と比較してほぼ遜色ない(ネコブ線虫罹患率消毒区1%に対して2〜3%)結果を得たが、土壌改良剤が投入されていない隣地境界部の罹患率は50〜70%であった。この結果は予想した値よりも良好であり、試験区の土壌中バチルス菌濃度は1.0E+07個/g程度存在することも確認できた。 なお乾燥汚泥中のバチルス菌はB.subtillusが優占であるにもかかわらず、製造された土壌改良剤の優占種はB.thuringiensisを中心とする複合的な種で構成されており、複数種のバチルス菌の相互作用がより効果を高めていることが示唆された。
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