研究概要 |
近年,湖沼や内湾などの閉鎖性水域では窒素やリンなどの栄養塩の流入によって富栄養化が問題になっている.しかし,窒素やリンの除去が可能な高度処理施設の普及率は非常に低く,有効な高度処理法の確立が望まれている.近年,研究の進んできたUASB法は,汚泥の減量化,高負荷での運転が可能であるが,低濃度廃水への実用化には至っていないこと,また,窒素除去に関する研究が少ないことが課題とされている.そこで,本研究ではUASB反応槽と接触酸化槽を組み合わせたラボスケールの下水高度処理システムを用いて長期間の連続運転を行い,低濃度有機性排水に対する窒素除去特性の検討と,活性試験及び分子生物学的手法を用いて窒素除去メカニズムの解明を試みた. 連続処理運転において,各槽内の処理温度18〜33℃,UASB槽ORP-100mV以下,接触酸化槽DO 2〜4mg/lで制御した結果,CODcr除去率はすべての条件で90%以上の高い性能を得た.窒素除去性能は,原水SO4-S 100mg/l, HRT8.4時間,循環比6,2槽目UASB槽への有機物を供給しない場合においてもT-N除去率は80%程度の良好な性能を達成した.ただ,処理温度が20℃を下回るとT-N除去率は次第に低下し,15℃以下では60%以下になることが判明した.良好な処理性能を得るためには,処理温度は25〜35℃が必要であることが確認された.また,活性試験の結果から,原水SO4-S濃度を33mglから100mglに変更したことによる窒素除去率の向上は,1槽目UASB槽の硫酸還元菌と2槽目UASB槽の硫黄脱窒菌の増殖の効果であることが確認された.
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