研究概要 |
鉄骨鉄筋コンクリート造(以下,SRC造)は他の工法と比較すると,その設計法の煩雑さや現場施工における工程の多さから敬遠される傾向にある。近年,部材の特長を生かし適材適所に配置する柱RC造梁S造のような新しい合成構造の開発が盛んになっており,鉄骨の特質である高靭性と施工性,コンクリートの耐久性と経済性を活かした複合構造の開発は重要であると考えられる。本研究では,せん断補強筋の簡易化と柱鉄骨形状の改善によって施工性を高めた柱SRC梁S造の開発を目的とし,水平加力実験を行い,その結果以下の知見を得た。 1)柱および梁鉄骨に小断面鉄骨を用いて施工性を向上させた場合,通常のSRC造と比較しても顕著な耐力低下は見られず,柱梁接合部の終局せん断耐力は当研究室で提案してきた修正式で適切に評価できる。 2)柱梁接合部のせん断補強筋を無くした場合,層間変形角が0.05radまでは耐力低下が見られず,実用に耐えうる施工法であると考えられる。また,修正式において柱梁接合部の有効幅を考慮する事でより適切に評価できる。 3)柱梁接合部の周辺部材を含めた架構実験において,柱補強筋としてワイヤーメッシュを用いた場合,通常のSRC造の鉄筋組みと比べると施工が容易であり,せん断抵抗性能とコンクリートの拘束効果については同等の性能を有した。 4)柱鉄骨ウェブ幅とフランジ幅を大きくし鉄筋を簡易化した試験体は,通常のSRC造よりも高い耐力を発揮し,無鉄筋の場合でも同程度の耐力を示した。これは,フランジ幅を大きくすることによって曲げ抵抗性能やコンクリートの拘束効果の向上に有効で有ると考えられる。しかし,フランジ幅を大きくすると被りコンクリートが薄くなるため打設時にジャンカが出来易く,施工性が悪くなる場合もある。 5)柱のせん断破壊と連動した場合の柱梁接合部のせん断耐力については,既往の設計式と対応が悪く,検討の余地がある。
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