研究概要 |
近年、核家族化や少人数,単身世帯の増加などにともない、犬や猫などのペットを家族の一員と位置付け、人と同様に扱う習慣が社会に浸透してきた。また、盲導犬,聴導犬や、犬,猫をパートナーとしたアニマルセラピーなどのように、人の肉体的,精神的障害を補うために動物を利用する機会も増大してきている。ここ十数年の間に、ペットは、おもに屋内で飼育されるようになってきており、その割合は都心部では90%以上に達している。しかし、人の住居は、ペットにとっては必ずしも安全でない部分も少なくない。その最も代表的な例の1つが床のすべりであり、すべりすぎることが原因で、ペットが関節の脱臼や骨折、あるいは股関節の形成不全など重大な障害に陥る事例が多数報告されている。しかしながら、ペットのすべりに関する研究は現在ほとんどなされていない。本研究は、ペットの安全性からみた床のすべりの定量的な評価方法を確立することを目的とする。 本研究のこれまでの成果をまとめると、以下の通りである。 ・ペットの床上での動作や、ペットが動作時に床に与える荷重を、脚の接地状況などを含めて詳細に測定,分析できるシステムを構築した。 ・人の感じるすべりを表示する試験機として開発され、妥当性が証明されている携帯型すべり試験機ONO・PPSMを改良し、改良した試験機で測定されるすべり抵抗係数でペットのすべりを表示できる可能性が高いことを明らかにした。具体的には、床との接触面にペットの足裏と近似したすべり性状を有する繊維系材料を用い、かつすべり測定時に床面に載荷する鉛直荷重を人間の場合の1/8程度に軽減することにより、獣医や実際にペットを飼育している方々の経験や意見とおおむね一致する結果が得られることを明らかにした。
|