平成17年度科学研究費補助金交付申請書の本年度の研究実施計画に基づいて、方立て壁のアスペクト比の異なる2体(アスペクト比30/12および30/15)の試験体を作成し、静的試験を行った。試験体は2層1スパンでスパン中央部に連層の方立て壁を有する1/8スケールの鉄筋コンクリート架構モデルである。結果として方立て壁はいずれもせん断破壊したが、壁はほぼ曲げ耐力を発揮し、また、せん断破壊時の層間変形は0.01radを上回ることを確認した。このことから通常の建物に多く使用される壁の破壊モードは曲げ破壊あるいは曲げ破壊後のせん断破壊となると考えられる。また、静的試験に供した二体の試験体と同一形状の試験体をさらに2体作成し、振動台試験を実施した。実験結果は静的実験とほぼ同様であり、方立て壁はいずれもせん断破壊した。また、壁が脆性破壊するとその層の変形が他の層に比べ著しく増大するが、ほぼ同一ループ内できわめて短時間の内に他の階の壁も脆性破壊し、結果としては破壊モードは全体崩壊系を呈した。しかしながら、この要因はいまだ不明確であり、次年度も引き続き検討を要する。骨組みがメカニズムに至るまでの等価粘性減衰定数は壁がせん断破壊型であるにもかかわらず、通常の減衰定数との合算値で0.1かそれ以上を期待でき、骨組みのエネルギー吸収能力は極めて高いと言える。静的実験でのメカニズム時の層間変形が0.01radを上回ることと合わせて考えると、方立て壁を耐震要素として使用できる条件は相当広いことが明らかとなった。
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