研究実施計画に基づいて、平成18年度実施の静的実験において層崩壊を起こした柱・梁曲げ耐力比が1.1の2層骨組試験体について、再度確認のための実験を実施した。前年の実験における柱芯に通したPC鋼棒による柱の軸力導入方法では、試験体の変形に伴い内挿するPC鋼棒も斜めに傾斜し、導入する軸方向力の水平成分が試験体の復元力に上乗せされるため、骨組が層崩壊機構を形成した後でも非崩壊層の負担せん断力が上昇する現象が生じ、結果的に非崩壊層の壁も破壊するという加力計画上の問題が判明したため、本年度の実験においては、軸力の導入方法を油圧ジャッキによる変更して上方から常に鉛直方向に加力する方式に変更した。試験体は1体で、実験方法は、昨年度、1昨年度と同様の静的加力試験である。その結果、昨年度に実施した試験体と同様に最初に2層の方立て壁がせん断破壊した後に2層の柱脚部が曲げ降伏する明確な層崩壊となることを確認した。また、本実験結果は昨年度までに開発してきた部材のせん断破壊及び破壊後の軸方向との連成挙動をひずみ硬化材料との類似から定式化した解析ツールによって解析的にも追跡しえるかを調べた。結果は、本解析モデルでは、接合部を剛体と仮定しているため、実験では比較的顕著だった接柱梁接合部、あるいは梁・方立て壁接合部のせん断変形を考慮しえず、方立て壁のせん断破壊時変形、崩壊形を呈する時の変形いずれも実験に比べて小さくなったが、崩壊形は実験と同様に2層の方立て壁がせん断破壊する層崩壊となることを示した。
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