研究概要 |
本研究の目的は,性能設計の実現を目指して,構造物の変形性能に基づく実用的な耐震信頼性設計法・評価法を構築することである。地震時には変形量が構造物の損傷限界や安全限界に直接対応することから,近年では,多層骨組の簡便な応答評価手法が提案されている。これらの簡易評価手法は,当然ながら評価誤差を伴うものであり,構造物の性能評価においては,用いる応答評価手法の精度を考慮する必要が有る。平成17年度は,報告者らが提案している多層骨組の最大変位応答の簡易評価法,および限界耐力計算における上部構造の応答評価手法の精度と適用性について,骨組の高さ方向の剛性分布や外力分布の影響を検討し,その評価誤差の統計的性質を把握した。また,提案されているこれらの応答評価手法では,一般に,多層骨組を弾塑性1質点系に置換して時刻歴応答解析を行い,この応答を多層骨組に戻すという手順となっているが,簡易な性能評価では,時刻歴応答解析ではなく,等価線形化手法と応答スペクトルより評価することとなる。これまでに多くの等価線形化手法が提案されているが,これらの評価精度についても統計的検討を行った。さらに,簡易応答評価手法と地震ハザード情報とを統合した簡易な耐震信頼性評価手法に関する基礎的な検討を行った。平成18年度は,構造物の変形性能評価において基本的な尺度である最大層間変形角に着目し,目標性能水準を再現期間r年の値とし,設計した建物の信頼性を評価化する手法として,簡易最大変位応答評価法を用い,応答評価誤差を適宜考慮しながら再現期間r年の応答を評価する手法(詳細法)を提案し,評価例を用いてその適用性を検討した。さらに,より簡便な耐震性能評価法として,再現期間r年の一様ハザードスペクトルを地震動強さとし,地震ハザード,簡易応答評価手法の評価誤差,および目標性能水準に応じた安全率により耐震信頼性を評価する簡便法を提案し,評価例を示しながら手法の適用性について検討した。
|