研究概要 |
本研究の目的は、鋼構造溶接部の動的外力下で破壊性状と変形能力の支配因子の検討を行い、溶接接合部の靭性および試験温度が、歪み速度と破断性状・変形能力の関係に与える影響を明らかにする事である。これにより、動的外力の影響を考慮した溶接構造物の安全性評価の基礎的資料が得られるだけではなく、動的外力を受ける溶接接合部が脆性的な破壊をおこさないための必要シャルピー吸収エネルギー値が提案できる。 本年度は、靭性の異なる供試体を実際の溶接で製作することが非常に高価・困難であることが判明したため、靭性の異なる供試体を安価に安定して製作する方法として再現熱サイクル試験機による熱加工に注目した。再現熱サイクル試験機で引張り試験片を熱加工するため、特殊な形状の試験片と熱加工ジグを考案し、靭性の均一な引張り試験片を製作することができること明らかにした。また、SN400,SN490,HT780材の熱加工サイクルとシャルピー吸収エネルギーの関係を把握するための実験を行った。 これらの検討によりパラメトリックな実験が可能となったため、SN400について本実験供試体を20体製作し、再現熱サイクル試験で靭性を変化させた後、靭性・歪み速度・応力集中の有無をパラメータとした超高速引張り実験を行った。実験には、"超高速衝撃構造性能評価システム-超高速引張りユニット-"および100kHzのデータ収集能力のある超高速デジタルメモリレコーダを用いた。この実験により、供試体の靱性と応力集中の有無が、歪み速度と破断性状・変形能力の関係に与える影響を明らかにした。今後SN490,HT780材についても同様の実験・検討を行う。
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