研究概要 |
今年度は,主に,以下の3課題を検討した. 1.梁降伏先行型鋼構造ラーメン骨組の梁に生じる塑性変形 現行の耐震規定に従って設計した現実的な鋼構造ラーメン骨組を対象に,地震応答解析結果を整理して,各層の最大層間変位角から梁に生じる最大塑性回転角や累積塑性回転角などを評価する方法を開発した.この結果は,4th International Conference on Advances in Steel Structuresなどで発表している. この結果によると,梁の上面が引張を受ける負曲げの最大塑性回転角の方が正曲げより大きく,兵庫県南部地震などで,梁下側フランジの破断が多く観察されていることと符合しない.これは,解析ではコンクリートスラブによる補剛効果を無視しているためであり,現在,コンクリートスラブの効果を考慮した地震応答解析を進めている. 2.柱梁耐力比が鋼構造骨組の地震応答に及ぼす影響 現行の耐震規定に準じて設計した魚骨型骨組を対象として,各層の層間変位角応答を一様化するために要求される柱梁耐力比を,地震応答解析結果に基づいて検討した.その結果,各層の層間変位角応答を一様化させるための柱梁耐力比は,骨組の層数にあまり影響されず,地震入力エネルギーの速度換算値が150kine(現行の耐震規定で想定している大地震程度)では1.2,300kineでは1.5程度であることなどを明らかにした.この結果は,鋼構造年次論文集などに発表している. また,現在,現行の耐震規定に従って設計された標準的な骨組を対象に,柱梁耐力比の調査を行っている. 3.粘性減衰が鋼構造骨組の弾塑性地震応答に及ぼす影響 地震応答解析を行う際に仮定される減衰定数や減衰型が地震応答解析結果に及ぼす影響についても検討しており,鋼構造年次論文集に発表している.
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