研究概要 |
コンクリートスラブと鉄骨梁との合成効果は,梁降伏先行型鋼構造ラーメン骨組の地震応答性状に重要な影響をもつことは明らかであるが,合成効果を考慮した地震応答解析はほとんど行われていない.本研究では,合成梁の挙動を適切に追跡できる地震応答解析法を開発し,合成効果が鋼構造骨組の最大層間変位角応答に及ぼす影響について検討した. まず,1次元有限要素法でモデル化された鉄骨梁に,コンクリートスラブの挙動を近似する要素を付加することによって,合成梁の弾塑性解析法を開発した.また,この方法による解析結果を既往の実験結果と比較しながら検討を行った.その結果を纏めると次のようになる. (1)コンクリートスラブの有効幅は,梁端部では支圧強度を考慮して算定される限界状態設計指針の値が適当で,梁中央部では各種合成構造設計指針の値を用いるのが適当である. (2)解析において,コンクリートスラブの応力度-歪度関係は,有限な長さをもつスラブの軸カ-軸方向変形関係を表すものとして用いられるが,その最大応力点以降の劣化勾配は素材試験によるよりかなり緩やかであると考えた方が適当である.この原因としては,柱と接触する部分の梁端部のコンクリートスラブが圧壊した後は,直交梁を介して応力が伝達することが挙げられる. 次に,現行の耐震規定にしたがって設計された現実的な鋼構造骨組を対象に,前記の方法による地震応答解析結果と,合成効果を無視した解析結果を比較して,コンクリートスラブの合成効果の影響を検討した.その結果は,次のように要約できる. (1)コンクリートスラブの合成効果を無視すると,固有周期は5-10%程度長くなり,最大層間変位角も1-1.5倍程度に増大する傾向がある. (2)鉄骨梁の断面2次モーメントを割増すことで曲げ剛性の増大だけを考慮すると,塑性ヒンジ法を用いても,最大層間変位角については良好な近似が得られる.
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