研究概要 |
近年予想外の動的外乱や偶発的事故などによって,構造物が崩壊に至る被害事例が発生している.何らかの原因によって骨組の特定の層で局所破壊が発生し荷重支持能力が消失しても,これに起因して建物の全体崩壊や進行性崩壊が生じないようにすることが重要である. 構造物が生き残る条件を考えると,落下に際しての上層部が持つ運動エネルギーを骨組下層部が吸収できなければ構造物は全体崩壊に陥ることとなる.2001年9月11日のWTC崩落はまさにこのことを実証しているといえる. 本研究は,鋼構造多層骨組の進行性崩壊を部材実験と応答解析に基づき解明することを目的とする.研究期間内で,柱の材長,断面形状,境界条件を変化させた一連の鋼柱中心圧縮実験を行い,実験で得られた復元力特性をモデル化し,それに基づき上層部の落下衝突後の下層部の柱の座屈後エネルギー吸収能力を考慮した鋼構多層骨組の動的解析を行い,進行性崩壊の条件を明らかにする. 平成17年度では,広範囲な細長比の鋼柱を対象に行った座屈実験に基づき大変形時の鋼柱の荷重変形関係をモデル化し動的崩壊解析を試みた.実在の建物を想定した多層モデルを対象に,落下層の位置,柱軸力比をパラメータとして解析を行い,進行性崩壊の発生条件や崩壊層数に及ぼす影響について検討を行った.また,試験的に簡単な縮小モデルを用いた落下衝突実験を行い,本研究における解析方法および解析条件の妥当性を検討した.
|