1.東海地震、東南海地震や日向灘の海溝型大地震の統計的グリーン関数法による短周期強震動予測の高精度化を目指して、佐藤(2004)の手法により地震基盤でのグリーン関数作成に用いる1Hz以上の加速度波形の経時特性モデルを作成した。伝播特性の経時特性は、揺らぎの自己相関関数がvon Karman型で短波長成分の少ない多重前方散乱理論に基づきモデル化されており、継続時間と対応する特徴的時間t_Mが震源距離の1.8〜2乗に比例し、周波数依存性が小さい。この経時特性モデルの係数から、不均質の大きさεと相関距離aを用いて得られる不均質パラメータε^2/aは、既に推定されている東日本の太平洋岸と比較して、東海・東南海沖周辺(ε^2/a=10^<-3.18〜-2.99>)で小さく、日向灘(ε^2/a=10^<-2.75〜-2.72>)で大きく、この特徴が反映されたモデルが作成された。 2.加速度震源スペクトルのフラットレベル(短周期レベルA)は短周期強震動予測を行う際の重要なパラメータのひとつである。日本全国で発生確率が最も高い想定宮城県沖地震の短周期強震動予測に向けて、2005年8月16日の宮城県沖地震の記録からAを推定した。その結果、今回の地震は、地震調査研究推進本部(2003)による1978年宮城県沖地震の地震モーメントとAの関係とほぼ同じスケーリングとなり、壇・他(2001)の内陸地震に対する回帰式の約2.6倍と大きいことがわかった。 3.2005年福岡県西方沖の地震では、福岡市内では警固断層の北東側の限られた地域で建物の被害がみられた。本研究では、表層地盤の1次元地盤増幅を考慮することで、福岡市の警固断層北東側で観測された主軸方向(N20゜E)成分の速度波形や周期0.7秒以上の応答スペクトルがほぼ再現できることを示した。また、推定最大速度が大きい地域は、建物の被害がみられた地域と整合することを示した。
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