研究概要 |
建物の廃棄物処理に関する現状の法規においては、建物規模を延床面積別に分類しゴミ集積所(廃棄物等保管場所,再利用対象物保管場所)に必要とする最低必要面積が簡単に示されているのみである。よって本研究では東京都内および近県に所在する大規模事務所建物の廃棄物処理施設に関して、再利用計画書等のデータ収集や現場調査を行い、この調査により得られた値から、廃棄物処理施設の中でも重要なゴミ集積所および付帯設備における適切な仕様について検討する。これらの知見から建物の廃棄物にかかわる計画・設計および運用管理において有効となる基礎資料を作成する。特に法規上においてゴミ集積所は単に平面的な面積として規定されている。このことは実際に必要とするストックスペースを室の容積として捉えていないということであり、廃棄物処理作業時のスペースにも大きな影響を与えているので、建築空間としてどのような問題点があるかを検討し改善点を明らかにするものである。 本年においては、環境負荷低減や資源の有効活用を目的としてリサイクルに対する関心が高まり廃棄物について種類の細分化が行われるようになりその結果、建物からの搬出効率の低下による環境負荷の増大,資源の浪費が進み、リサイクルの目的と矛盾していることが明らかになった。そこで環境負荷低減手法としてまず廃棄物の搬送効率の向上を目的とした提案を行うこととした。 廃棄物の分類は搬送効率向上を目的とした計画において、搬送車の許容量に達するまで廃棄物を一定期間保管し回収する種類,可燃ゴミや生ゴミのように衛生上の理由などから毎日回収する種類の2種類を定義した。一定期間保管する廃棄物、毎日回収する廃棄物の保管容器台数は既往の研究における回帰式、本調査における組織別発生割合およびかさ比重を基にした算出式から求め、廃棄物保管容器容量の総和が搬送車許容量と同等になるように保管容器台数を確保する。 保管施設で保管されている廃棄物の容積が搬送車許容量に達するまで保管し回収作業を行う際の回集時期決定基準として保管施設の残余保管日数を使用する。残余日数が0日となった物件について、保管されている廃棄物容積が搬送車許容量に達したことを示し搬送車はこの物件の保管施設へ回集に向かう。回集車側はこの残余日数を基に各建物の巡回計画を立て、毎日回収する場合1物件からの1日の排出容積だけでは搬送車許容量に達する可能性は低いため、複数の建物を巡回回集し廃棄物の総和が搬送車の許容量に達するように計画を立てることが有効であることを明らかにした。
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