研究概要 |
建物の廃棄物処理に関する現状の法規においては、建物規模を延床面積別に分類しゴミ集積所(廃棄物等保管場所,再利用対象物保管場所)に必要とする必要最低面積が簡単に示されているのみである。よって本研究では東京都内および近県に所在する大規模事務所建物の廃棄物処理施設に関して、再利用計画書等のデータ収集や現場調査を行い、この調査により得られた値から、廃棄物処理施設の中でも重要なゴミ集積所および付帯設備における適切な仕様について検討する。これらの知見から建物の廃棄物にかかわる計画・設計および運用管理において有効となる基礎資料を作成する。特に法規上においてゴミ集積所は単に平面的な面積として規定されている。このことは実際に必要とするストックスペースを室の容積として捉えていないということであり、廃棄物処理作業時のスペースにも大きな影響を与えているので、建築空間としてどのような問題点があるかを検討し改善点を明らかにする。 近年、環境負荷低減や資源の有効活用を目的としてリサイクルに対する関心が高まったことで廃棄物の種類が細分化している。また、種類ごとに保管することから必要なごみ保管面積が増加しており、今後も増加していくことが考えられる。 本年度においては、現在ごみ保管施設は各自治体が設置している設置要綱などを用いて設計,計画されているため、それら基準と今後のごみ排出形態を考慮したごみ保管場所の提案を行うことを目的とし、ごみ保管施設に関して自治体が設置する基準の調査を行った。また同時に、各施設から排出されるごみの分別状況,運搬処理方法,ごみ問題に関しての取り組み,ごみ有料化状況,市町村合併により発生したごみ問題等の調査も行っている。 調査は基礎調査として東京都区市町村,千葉市,さいたま市の55[件]と、全国の政令指定都市,中核市,特例市,県庁所在地,その他人口の多いと考えられる市100[件]を対象にアンケート調査を行った。アンケート回答自治体は92[件]と高い回答率で、その人口総数が全国人口総数から占める割合は36.8[%]にのぼる。また、基礎調査を含めると48.2[%]となり全国のおよそ半数にあたる。 ごみ保管施設についての基準は147[件]のうち事業施設は42[件](うち基礎調査自治体が24[件])、住居施設は76[件]の自治体が設置しており、事業施設に関しては廃棄物処理法で事業活動に伴って生じた廃棄物は事業者の責任において適正に処理するとのことからあまり関与しておらず設置件数は少ない結果となった。このことより、全国的に参考となる計画案が必要であることが分かった。
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