本研究では、加圧式床吹出空調方式と併用したパーティション型TACにより形成される執務空間の温熱環境特性の把握、およびTACが被験者の温冷感、快適感、生産性に与える影響の検証を目的とし、実オフィスにおいて、タスク空調特性把握実験、温熱環境実測、執務者に対するアンケート調査、被験者実験を行った。タスク空調特性把握実験は、タスク空調システムの特性を把握することを目的とし、タスク域の気流速度分布、人体各部位の気流速度測定をM社新社屋にて行った。また、タスク気流の当たる環境にサーマルマネキンを曝露し、その応答からTACが執務者の各部位にどのような熱的影響を及ぼすかを評価した。温熱快適性及び知的生産性の調査は、M社において業務を行っている執務者の男性6名、女性2名の計8名を対象に温熱快適性評価をアンケート申告により行った。アンケート申告は、1日のうち出勤後、勤務中(午前、午後各1回)、退勤前の4回行い、これを3日間連続して行った。 得られた主な知見は以下の通りである。 1)タスク域気流測定実験では、気流方向軸上の測定点、特に吹出口と同じ高さで気流速度が高くなった。2)人体各部位気流測定では、各風向時において同様の傾向がみられ、胸部で気流速度が高くなった。3)サーマルマネキン実験では、Head、L.Forearm、L.Upper arm、Chestにおいて等価温度の低下がみられ、特にHeadへの影響が大きかった。4)タスク空調を導入しているM社で執務者を対象に実測を行い、温熱環境におけるアンケート調査結果を示した。5)暑いと感じる部位では、男性は各条件で顔、首、背中などの上半身の申告が多く、女性はoff条件で首、腹、腕の申告が多くみられた。6)SET^*が28℃以上のアンビエント環境でも「どちらでもない」付近の申告がみられた。
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