研究概要 |
建築物を対象としたバイオテロの対策は次の3段階に分けられる。段階1(平常時):空調システム内の浮遊微生物粒子の濃度をリアルタイムで検知し,異常値が出た場合に迅速に浮遊微生物の濃度を正確に確定し,緊急処置を要するか否かの判断をする;段階2(緊急時):上記の段階1で緊急処置を要する場合,空調を止め,適正な気流計画を行うことによって,居住者の被暴量を最小限に抑えながら避難させる;段階3(事件後):空調システムと建築物の利用の再開における消毒を行う。 本研究は主として段階2に関する検討を行った。 平成17年度は,主としてバイオテロとその対策に関する既往の文献のレビューを行った。また,バイオテロに使用される可能性の高い病原体である天然痘(ウィルス),炭疽菌(細菌),ペスト菌(細菌),ボツリヌス(毒素)の感染経路,潜伏期間,半数致死量のほか,その対数平均径などの情報をまとめた。 平成18年度は,空中での浮遊微生物粒子の挙動を明らかにすると共に,エアフィルタによる浮遊微生物粒子の捕集性能と捕集された微生物の生態についての研究を行った。天然痘ウィルスの平均径は0.224μm,炭疽菌は1.118μmとなっているが,それは単体での大きさである。実際の場合,空中に浮遊する微生物粒子はいくつかの粒子の複合体であることを実験より解明した。 平成19年度は,病原体を空調システム内,室内に放出された場合を想定し,その病原体の室内への侵入特性や,室内での発生源と空調の排気口の配置を変化させた場合の室内汚染濃度の分布などに関する研究を行った。また,バイオテロを発生した緊急時を想定し,居住者の避難通路を確保するための対策についての検討を行った。具体的に,建築基準法の範囲内で排煙システムを空調システムとして兼用し,緊急時に避難通路を確保するための空調システムのあり方について検討を行い,そのシステム構成例を示した。
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