本研究は、河川から便益を受ける地域住民が河川管理者と共同して、河川環境を維持改善するための営為を地域共同管理と定義し、その成立条件を明らかにするために取り組んだ。 東海4県の出先機関および市町村を対象としたアンケート調査によって、計画策定、維持管理、河川利用の3つの段階にわけ、住民等が積極的な関わりをもつ事例を収集した。地域共同管理としては、維持管理のみが65%と多いが、複数の段階にわたって住民等が関わりをもつ河川が17%あった。河川管理者が住民等の参加に期待する河川は、計画策定では地域の声を反映した整備が必要な場合、維持管理では河川管理者だけでは維持管理が困難な場合、河川利用では地域に親しまれてきた河川の利用を促したい場合であった。一方、住民等が維持管理に参加する理由を把握するために、各県の河川維持管理組織の支援事業に登録されている組織を対象にアンケート調査をした。維持管理に取り組む理由は、河川への愛着、環境悪化による危機感、昔からの慣習等であった。さらに、住民等が河川利用する理由を把握するために、日本河川協会の「川や水の活動団体名簿」を使ってアンケート調査をした。親水活動する理由は川に親しむ実践、きれいな河川景観の維持、清潔な河川環境の維持、生態系保全等であった。したがって地域共同管理が成立するためには、河川管理者が住民等の参加に期待している河川であり、かつ住民等が維持管理や河川利用に関わる意向をもつ河川であることが必要と考えられる。 次に、地域共同管理の効果を検証するために、住民等が維持管理と河川利用に関わっている豊橋市朝倉川、維持管理のみの豊橋市柳生川の沿線住民を対象にアンケート調査によって、維持管理への参加、河川利用の実態および河川環境に対する評価を把握した。朝倉川の沿線住民の方が、河川利用や維持管理に幅広い参加があり、愛着をもつものが多いことがわかった。
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