本年度は、都市内を流れる農業用水路を対象に、管理者としての土地改良区と住民による地域共同管理を取り上げた。 東海4県の土地改良区を対象としたアンケート調査から、農業用水の問題点として、漏水や断面不足など農業用施設としての物的状態ばかりでなく、ゴミの増加や雑排水による汚濁に対応するための維持管理、時代のニーズにあわせた親水空間整備などを指摘する土地改良区が少なくないことがわかった。そこで農業用水の整備計画づくり、農業用水の維持管理あるいは農業用水を活用した催事への参加の3つの段階にわけ、地域共同管理の実態を把握した。住民関与がない農業用水を管理する土地改良区が59%あるが、維持管理のみに関わりがあるもの18%、農業用水を活用した催事への参加だけがみられるもの10%、複数の段階に住民が関わりをもっている土地改良区が13%あることがわかった。 地域共同管理の展開が農業用水沿川住民の参加意識に及ぼす影響を検証するために、複数の段階に住民関与がある土地改良区の中から三島市源兵衛川と豊橋市牟呂用水を取り上げ、地域共同管理の経緯と特徴を把握した。前者はNPO、後者は豊橋市や町内会、小中学校が中心となった地域共同管理である。沿川住民を対象にアンケート調査から、清掃活動へ参加したことがある住民は源兵衛川22%、牟呂用水42%であるが、農業用水を地域全体で管理すべきと考える住民が前者57%、後者40%、さらに今後の清掃活動への参加意志も前者では61%、後者では75%もいた。これらの参加意志のある住民が清掃活動に参加する条件は、農業用水の利用実態、愛着、維持管理に参加しない理由などの分析から、利用によって農業用水から何らかの便益を享受していること、農業用水に愛着を持っていること、清掃活動に関する情報が伝わること、時間的都合がつくことなどであることがわかった。
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