閉鎖されたホテルのプレヒアリング調査を実施しそこでの知見を踏まえ、質問紙によるビル所有者等に対する郵送調査を実施した。郵送調査対象については高回収率を目的とし、これまでビル所有者等が不明であった約50事例の所在地の市町村に対して電話・FAX調査(研究実施計画に新たに追加)を行い、現状確認と地名・地番の情報を入手し調査可能対象事例を増やした。その結果、全事例数に対し回収率は40.9%(調査可能対象事例数に対しては53.5%)となった。 引き続き、上記調査への協力者の中から代表的事例または有益な事例を選定し、ヒアリング調査を実施した。事例数は計9事例である。 調査対象とした閉鎖されたホテル223事例について、郵送調査とヒアリング調査の結果を踏まえ、従後の状況別に傾向と課題・方策を以下に列記する。「ホテル再生(90事例)」ではロビー・ラウンジや料飲施設が客室に転用されるケースが多く、これら諸空間の客室への転用を念頭に置くことが時代の変化に対応できる設計の要件である。「用途変更(28事例)」では医療・福祉系の施設への変更が最も多いが、集合住宅・事務所・商業系施設・学校なども少なくない。しかし、共通する障害は廊下幅・躯体・分散型PS・階高であり、横引き集中型のPSやゆとりある階高の事例の場合、特に客室階の変更用途の選択の幅が広がる。「遊休化(20事例)」「更地(17事例)」は立地特性が深く係わっており、新築の企画段階での立地特性の理解や将来的な都市間競争に対する読みが重要である。「建替え(70事例)」では築年数との関連が大きいが、土地・建物の所有権が移転しているケースが多く、かつ既存建物の有効利用自体への関心が希薄である。新たな所有者への建物の再利用方法等に関する情報伝達が鍵となる。
|