近年、イギリスの大都市都心周辺地区を中心に、コミュニティを企業化し、自主的に環境整備、社会的サービスを提供する組織としてまちづくり事業体(まちづくりトラスト、Development Trust)が注目されている。 その場合、まちづくり事業体(まちづくリトラスト)が、長期、安定的、しかも独自の判断で環境整備、福祉サービス、雇用促進などの活動に取り組むためには、「財政自立」が最も重要であるといわれる。 この研究では、(1)ロンドンの都市高速道路下を利用した-大福祉センターの経営=ウェストウェイまちづくり事業体をまず取り上げ考察した。最も早い時期の設立であり、高速道路下の空間を借地し、その経営により財政自立を図ってきた先駆的事例としての位置づけである。初期に、自治体の支援により、高架下の借地権設定が可能になったこと、施設建設の過程で事業計画にもとづき、自治体が建設資金支援を行ったこと、2000年になり、施設の大規模改修に宝くじ基金など外部資金を導入したことなどの一連の「財政自立」へ向けてのプロセスを明らかにした。まちづくり事業体と自治体が協力し、またスポーツ施設経営にみる民間企業並の経営力でもって「財政自立」が可能となっている。つぎに、(2)リバプールの社会的住宅地であるエルドニアンまちづくり事業体を取り上げた。一般住宅地の経営では、長期に安定的に収入を得ることは、商業地、駐車場経営などから確保できる収入に比し難しいが、エルドニアンまちづくり事業体の場合、その困難を克服し、ますは家賃収入を環境改善に当てる、各環境関連施設の建設費は自治体支援で、その収支をできるだけ均衡させる段階、さらに次第に外付けの事業部門を展開するといった発展を遂げている。こうした事例から、「初期における不動産資産の取得とその経営による財政自立」、つまりアセット・マネージメントがまちづくり事業体の「財政自立」にとり重要である点に注目し、公園、スポーツ施設などのアセット・マネージメントの事例をまとめた。
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