既存学校施設を有効に活用していくためには、たゆまない維持管理と適切な改修・補修が必要であるとの認識に立ち、本研究では、経過年毎の維持管理コストを実態から把握し、計画修繕計画の必要性を明らかにしたいと考えた。また、一般に適切な維持管理がなされている分譲集合住宅を参考に、学校施設における計画的長期修繕計画のモデルを提案し、どれだけのコストを予測すれば現状における建物の室を保つことが出来るかを予測した。以下、そのまとめである。 (1)全国の市町村の学校設置者に対し、平成14・15年度に費やした維持管理コストを調べた結果、一校当たり平均1.000万円以上投資している神奈川県、600〜800万円程度は9都道府県、全国平均は約400万であった。これらの費用には耐震改修も含まれる。 (2)各学校の管理者(関東地区)に、修繕要望等アンケートを実施した結果、耐震診断の実施率では栃木県が50%未満だが、神奈川県94%、東京都89%、群馬県86%と診断率が高い。また、施設への修繕内容では、小学校では築31〜40年目、中学校では築21〜30年経た校舎(普通教室等)の天井・壁・床・窓・出入口など内装の改修、設備更新が多い。特別教室はそれに加え設備器具の更新の要望が多い。屋内体育館の天井・床等内部仕上げと照明器具、放送設備に対し、敷地周辺のフェンス、校門、門扉等の更新要望が顕著であった。 (3)東京都を中心とする学校の具体的な修繕周期に関しその実態を調べた結果、計画的な修繕は行われていなく、対処療法的な手法での改修であることが分かった。 (4)そこで、具体的なモデルで、修繕周期を求めた結果、12年周期で部位ごとに修繕計画を立てれば少なくとも新築時の質を保つことができ、その費用はおよそ年300〜400万円一校当たり、積み立てれば、実施可能であることが分かった。勿論、突発的な耐震補強等のものは除いてである。 (5)上記の金額は、地方交付税で積算されている建物維持管理経費に匹敵していることが分かった。
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