建築材料・部品は開発以降様々な理由に基づき変化しており、それに伴い、材料・部品を受け入れる側としての建物の構法も変化している。今後の建築構法のあり方については、各材料・部品や構法の変遷、さらにはその理由や必然性に関する網羅的把握が不可欠である。 本課題では、我が国において普及した建築材料・構法のうち、繊維系断熱材、発泡系断熱材、断熱補助材、ならびにそれらの複合によって形成される断熱建材とその関連構法を対象とし、近代以降現代に至るまで変遷過程を明らかにすることを目的とした。 調査は社史・業界史、過去のカタログ、社内資料、雑誌などにおける記述を網羅的に収集する文献調査と実際の開発担当者や施工技術者を対象としたヒアリング調査を中心とした。これらで得た情報は製品種・構法の属性・時間の3軸からなるマトリクスに整理した。 主要な断熱材の変遷を以下に示す。 繊維系断熱材:石綿の代用品としてのグラスウールやロックウールの鉱物繊維断熱材から開発が始まり、以降住宅用製品として様々な構法的検討が加えられた。近年では環境問題を背景に自然素材を利用した木質繊維などを利用する製品開発の傾向が明らかとなった。 発泡系断熱材:合成樹脂を原料とするものに始まり、難燃化の検討を経て住宅用途への採用が始まっている。繊維系と同様に、近年では環境への配慮が顕著であり、ノンフロン化が製品開発の軸となっていることが明らかとなった。 床の断熱構法においては、製品開発の展開を背景とした構法の変遷が確認できた。 最終的に木質セメント板などの断熱補助材、各種断熱材や各種建材を組み合わせた複合素材のものを含めて調査を行い、変遷の全体像を明らかにしている。 現在に至る各種断熱材の変遷の特徴は、いずれも昭和50年代までに多様な製品開発が行われたが、現在では要求性能の高まりや環境への配慮を軸として、製品全般に渡って整理されつつあると概括できる。
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