研究概要 |
2006年度は次のような作業を実施した. 1.初年度に選定した2街区について250分の1の現状模型を完全に仕上げた.これにより,街区内の町家とその他の建築物との分布を立体的に把握できるようになり,街区空間の現状を物的に確認することが可能となった.街区は南北に長い街区と正方形の街区の2種類で,前者は御池通りより北側,後者は四条通りより直ぐの南側に立地し,後者の方が視覚的にも高層建築物による街区空間の混乱が明確となった. 2.街区の空間変化の予測をより精密に行うため街区内土地所有者全数について登記簿をあげ,所有状況の現状を整理した.その検討の結果,いくつかの傾向として高層共同住宅(いわゆるマンション)における区分所有権の特定者への集中,低層木造住宅の一定権利者による買い取り集中が指摘できることが明らかになった. 3.予測の条件としてとくに土地所有権の現状を判断して,南側の正方形街区については町家の更なる滅失およびその跡地など高層化の可能性のあることが明らかとなった.北側街区では,染工場などの跡地の中層化,あるいは敷地の細分化が予測された.さらに,所有権の移動経歴の検討を加える必要があることが明確となった. 4.町家の利用形態の傾向を探るために,工房として活用する可能性の検討を行った.これは,2街区に限定することなく,歴史的市街地の広がりで調査を実施した業種としては陶器,皮革,繊維関係などがあげられ,利用形態は賃貸が主流であることが明らかとなった. 5.町家の間取りの変遷を作庭の側からたどる調査は,一定のまとめを行った.とくに,前栽,坪庭などと呼ばれる外部空間の存在は,住むという行為によって一層明確にされるという歴史的経過を浮き彫りにできた.このまとめを含めて2007年4月に著書を出版する.
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